はじめに
フォートナイトC2S8の途中、いきなり「フレンド紹介プログラム」というフレンド絡みのプログラムが開始されました。(2021年10月31日時点)
(またか・・・)というのが最初にこの情報を知ったときのブログ主の感想でした。
これまでにもフレンドを絡めたイベントやプログラムはブログ主がフォートナイトを始めたC2S3以降も数回あり、ブログのネタにさせてもらっていました。(フレンドカテゴリー参照)
ところが、今回のプログラムの内容・詳細を理解し、(これは今までのフレンドネタとは違う切り口の話だぞ)という直感が働き、旬なうちに記事にしようと書き始めた次第です。
ここのところ、Twitterなどで「ブログ読んでます!」「サインください!」といったコメントをいただくことも増え、調子に乗り出しているブログ主ですが、同時にヒット作を出した後の新人作家のようなプレッシャーも感じているので、ネタもなく面白くもなんともない記事もたまには書いておこうという(逆の)息抜きの目的もあります。
目次
フレンド紹介プログラムとは
フォートナイトで「フレンド紹介プログラム」なぞという、言葉だけ聞くと極めて胡散臭いプログラムが始まっている。
プログラムの内容を理解した後は、恒例となったフレンド編のようなネタにはならないなと思ったものの、毎回フレンド関係のイベントやプログラムがあればそれをネタにしているので、今回記事にしないことも不自然である。
フレンド紹介プログラム概要
今回のフォートナイトでのフレンド紹介プログラムについては公式サイトに以下の記載がある。
1.過去30日間、メインのフォートナイト バトルロイヤルゲームモード(例: ソロ、デュオ、トリオ、またはスクワッド)のプレイ時間が120分未満のフォートナイトのプレイヤー(新規プレイヤーを含む)を最大5人フレンド紹介プログラムに登録しましょう。全参加資格の規約と要件についてはフォートナイト フレンド招待プログラム参加規約(こちらのリンクよりアクセス)をご確認ください。
2.招待したフレンドと一緒にゲーム内タスクをクリアして報酬を獲得しましょう。
注: 別々のフレンドと一緒に同じタスクを複数回クリアすることも可能ですが、報酬を獲得できるのは一度だけです。
公式サイト
すごい乱暴に整理をすると、
- フォートナイトに新規ユーザーを勧誘する
- 段階的に設定されたミッションを一緒にクリアする
- クリアごとに報酬アイテムがゲットできる
という、新規ユーザー獲得目的であることを一切隠さない極めて潔いプログラムである。
過去30日間のプレイ時間が120分未満のプレイヤーも対象ですが、「非アクティブユーザー」を「アクティブユーザー」にするということなので「新規ユーザー獲得」と一括りにします。
段階的なミッションの最後で取得できる報酬は「レインボーレーサー」という女性スキンであり、スキン好きにとっては非常に魅力的な報酬といえる。
しかし、最終段階のミッションは、本人と新規ユーザー双方のレベルを60上げるというなかなかの鬼畜設定である。
フレンド紹介プログラムの狙い
前述したとおり、このプログラムが新規ユーザーの獲得、すなわちユーザー数を増やすためのものであることは明らかである。
もう少し正確に記載するならば、完全な新規ユーザーの獲得に加え、「非アクティブユーザー」(ID登録したけどプレイしていない幽霊ユーザー)を呼び戻し、「アクティブユーザーを増やす」ということが目的だろう。
ユーザー数を増やしたい理由
Epic Gamesは営利企業であるため、ユーザー数を増やすことで利益を増やしたいということが単純に想像できる。
フォートナイトは無料でプレイができるため、フォートナイトでのEpic Gamesの収入は主にアイテム課金となる。
ゲーム機メーカーなどとのライセンス契約による収入またはコストは詳細が不明のためここでは割愛します。
またFortnite Crewというサブスク型サービスも提供していますがそちらも割愛します。
収入の構造
これを計算式にすると
- アカウント数✕アクティブ率=アクティブユーザー数
- アクティブユーザー数✕課金ユーザー率=課金ユーザー数
- 課金ユーザー数✕平均課金単価=収入
という順番で算出することができる。
増収の方法
売上を増やすためには、それぞれの数字を増やせばいいわけである。
今回のプログラムは(露骨に)アカウント数とアクティブユーザー数を増やすことを目的としている。
それぞれの要素について記載をする。(便宜上、順番を前後させます)
課金ユーザー率
某国内大手ソシャゲメーカーの知人から聞いた話では、
「(一概には言えないが)概ね20%程度」
ということである。(それを当てはめれば5人に1人が課金をしていることになる。)
この数字は「魅力的な課金アイテムの登場」「Fortnite Crewといった別の課金システムの導入」などで向上は図れるが、仮に10%改善させたとしても課金ユーザー率は20%→22%となるだけであるし、非課金ユーザーの行動特性を変容させて新たに課金させるということは難易度が高く、効率は悪い。
ただし、長期間かつフレンドとプレイをしているとスキンが欲しくなってくるということはあります。
そういう意味で「フレンドとレベルを60まで上げさせる」という今回のミッションは、ユーザーの定着と非課金ユーザーを課金ユーザーに転換させる目的を兼ねたものであると推察できます。
平均課金単価
これは課金アイテムの価格を上げることと、ユーザーの購入回数を増やすことで向上が図れるが、前者は値上げを意味するわけで、ユーザーの反発を受けることになりメーカーとしては慎重な判断が求められる。
購入回数を増やすことについてはアイテムショップに次から次へと新商品を流せば良い。
アカウント数 / アクティブユーザー数
順番が前後したが、2021年6月時点のロイターの記事によるとEpic Gamesは6月22日にアカウント数が5億人を超えたと発表している。
-
「フォートナイト」の米エピック・ゲームズ、アカウント数5億超え | ロイター
人気オンラインゲーム「フォートナイト」を開発する米エピック・ゲームズは22日、アカウント数が5億を超えたと発表した。
jp.reuters.com
このうち、アクティブユーザーがどの程度かは不明であるが、過去に実施されたフレンドカムバックキャンペーン(正式名称忘れた)や、今回のプログラムを実施したということは、Epic Gamesとしては「アクティブ率を上げることに効果がある」と判断したわけである。
現状のアクティブユーザーを(悲観的に見て?)10%の5,000万人としよう。
そのうち(課金ユーザー率と同じ)20%の1,000万人がこのプログラムに参加し、それがすべて成功したとすると、新規アクティブユーザーは1,000万人の増加である。
新規アクティブユーザー1,000万人の20%が新たに課金ユーザーになるとすると200万人である。
スキンやその他アイテムのV-Bucksの平均課金単価を1,000円とすると、200万人✕1,000円=20億円の増収となる。
収入構造においてアクティブユーザーを増やすということは単純に数の理論でもっとも直接的で効果的と言える。
レインボーレーサースキンがどうしても欲しい方には水を差すようで申し訳無いが「プログラミングで書かれた3Dモデル」(しかもテクスチャの張替えだけだろう)というほぼコストゼロの報酬でこの効果は魅力的である。
上記はモデルを単純化していますが、アクティブユーザー数を増やすことが増収に最も効果的というメッセージとして捉えてください。
Epic Gamesの収益構造
フォートナイトに限らずEpic Gamesという企業としての収益構造にも触れておきたい。
Epic Gamesは非上場企業のため、内部情報はほぼ非開示である。
しかし、Epic GamesのWikipedia(English)では、Epic Gamesの製品ラインは以下のとおりとされている。
(それぞれ後ろに「事業」という言葉をつけるとイメージしやすいかもしれない)
製品ライン
- Video Games
- Unreal Engine
- Epic Games Store
- Epic Online Services(今回は割愛します)
当然、各プロダクトライン別の売上高、営業利益(率)、利益(率)などの詳細は開示されていない。
Video Games
フォートナイトはVideo Games(事業)に位置づけられる。
現状、Epic GamesのVideo Gamesにおける主力製品がフォートナイトであることは明らかであるので、Video Games(事業)の収益の柱として、全社業績を支えるために重要なポジションにあると言えるだろう。
Unreal Engine
これはフォートナイトでも使われている(3D)ゲームエンジンと呼ばれるものである。
Epic Gamesはこの自社開発のゲームエンジンのライセンシングでも収益を上げている。
以下は、”Global Game Engines Market Size, Status And Forecast 2021-2027”という市場調査レポートで、この分野をガチで調査しようと思えば購入必須であるが、US$3,900(40万円以上)するので自腹を切ることは勘弁していただきたい。
市場調査レポートは普通にこれくらいの値段します。
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Global Game Engines Market Size, Status And Forecast 2021-2027 | Market Insights Reports
Global Game Engines Market Size, Status and Forecast 2021-2027
www.marketinsightsreports.com
このレポートの概要から分かることを記載すると、
- 世界のゲームエンジン市場規模は2020年の約300億円から2027年には約700億円になることが見込まれる
- 2021年から2027年の年平均成長率は12.9%と見込まれる
グローバルのGDP成長率が年率3%であり、その約3倍となる10%がメガトレンドのひとつの目安とされるのでそれを超える成長率が見込まれている。
投資をされる方は投資分野を探す際の参考にしていただければと思いますが、結果には一切の責任は負いません。
また、この分野はUnity TechnologyとEpic Gamesがシェア上位を占めており、上位10社でシェア8割を占めている。
Epic Gamesとしては、市場成長率と現状の市場占有率から最も投資を行いたい領域と想定される。
Epic Games Store
これはAppleの訴訟にも関連するが、Epic Gamesは自社販路を持ち、自社および他社のゲーム(ソフトウェア)の販売プラットフォームとなることでコミッションを得ている。
PCゲーの最大販売プラットフォームのSteamのコミッションが30%であるのに対し、Epic Games Storeのコミッションは12%と良心的である。
プロダクト・ライフサイクルから見た懸念
プロダクト・ライフサイクルとは
下の図は時間を横軸にし、ある製品の販売数量と利益を製品寿命の観点から表したプロダクト・ライフサイクルと呼ばれる概念図である。
Aが販売数量であり、Bが利益となる
1から4は製品の成長期を示しており
- 導入期
- 成長期
- 成熟期
- 衰退期
を意味する。

フォートナイトの現状
昨今のフォートナイトにおけるユーザー獲得キャンペーンの動向およびフォートナイトがすでにサービス開始から3年以上経過していることも考慮すると、少なくとも「成熟期」を迎えているというのがブログ主の見方である。
追記
FPSやTPS、格ゲーといったジャンルにおいては、先行開始プレイヤーの技術力が向上するため、新規ユーザーとの技術格差が時間の経過とともに生じやすく、新規ユーザーの参入障壁が高くなりがちです。
当然、同レベル帯のプレイヤー同士がマッチングするシステム、BOTの導入、初心者救済アイテムなど、Epic Gamesとしてはあの手この手で対策は講じているのでしょう。
しかし、(特に格ゲーでは)一部の先鋭化した上位プレイヤーがさらなる高みを目指して声を大きくすることで、ゲームシステムや開発の方向性が上級者向けに寄りがちとなって、それが新規ユーザーの参入障壁となります。
かくして、製品サイクルとしてはユーザー数の減少による赤字という衰退期を迎え、サービス終了となりやすいのが対戦型オンラインゲームの特徴と感じています。
Epic Gamesの成長戦略との関係
今回のフレンド紹介プログラムの内容を確認し、ブログ主はEpic Gamesのフォートナイトからの収益が鈍化しており、テコ入れのために新規ユーザー(アクティブユーザー)の獲得プログラムを開始したのではないかと勘ぐった。
その背景として、フォートナイトの製品(サービス)寿命が、ユーザー数と利益という点で頭打ちになりだしたのではないかと推測した。
またEpic Gamesの他事業領域を見たときに、プロダクトポートフォリオの観点から、フォートナイトを(低成長領域での)安定的なキャッシュ創出マシーンに位置づけ、そこで創出したキャッシュを次の成長領域であり、昨今その言葉が広まり出したメタバース領域(3Dの物理エンジンが必須であり、エンターテイメントとの親和性が高い)に投入する戦略と理解した。
Sonyが2021年に行った戦略的追加出資も、エンターテイメント領域との親和性による戦略的提携と公表しています。
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https://www.sony.com/ja/SonyInfo/IR/news/20210414_J.pdf
www.sony.com
まとめ
- Epic Gamesはフォートナイトのアクティブユーザーを増やすために露骨なプログラムを実施
- 背景としてフォートナイトからの収益がサチっている(頭打ちとなっている)と思料
- フォートナイトの収益を次の成長領域であるUnreal Engineおよびメタバース領域に投資したいということが考えられる

仕事から逃げるために書き始めたら仕事以上に仕事になってしまいました。
たまにこういう記事も挟みます。こういう見方をするとフォートナイトも違った楽しみ方ができるかもしれません。